株式会社フォーエバー
代表取締役 久永忠範ひさなが ただのりさん

鹿児島市ではクリエイティブ人材の誘致に力を入れていますが、今年度は従来の観光型の移住体験に加え、地域企業でのクリエイティブワーク(付加価値を創造する業務)を通して「働く街」としての鹿児島を体感していただくことで、関係人口の創出を目指すジョブケーション型の移住体験プログラムを企画しています。「住む街」としての生活環境に加え、地域企業とのクリエイティブワークを通して「働く街」としての鹿児島 を体感していただく予定です。ジョブケーションの受け入れ先企業3社(それぞれクリエイティブ、デジタル、マーケティングというテーマ)に、事業内容や自社の魅力、鹿児島市ならではのやりがいについて語っていただきました。

Q.「株式会社フォーエバー」とは、どのような会社ですか?

フォーエバーを創業したのは1996年11月で、現在26年目になります。
当社は、地域産業と企業の情報化支援を核として、システム開発、IT研修、Webサイト構築、ITコンサルティングなどを行っています。現在、インターネットなどの急速な普及により、企業の内部、外部のネットワーク化が進んでいるため、ネットワークを利用した情報の受発信と共有により、今まで以上に企業の効率的な業務推進が可能になると思います。そこで、特に地域における地場産業との連携や情報化の支援を積極的に行い、企業と県民の皆様の情報リテラシーの向上や雇用拡大を担う業務を推進しています。企業理念としては、「フォーエバーは、地域に密着し、地域を活性化し、創造的な人材を育成し、鹿児島から全国へ、世界へと情報や技術を発信できるグローバルカンパニーを目指す」ということを掲げております。
創業時は社員4名でしたが、現在は約60名で各事業を運営しています。事業所は鹿児島市以外に薩摩川内市と枕崎市にあります。地域の活性化のために、地域ごとに拠点をおいて事業を展開しています。

Q.創業はどのような経緯でしたか?

私は大学卒業後、就職せずに、長野県の八ヶ岳で山小屋の小屋番をしていました。山が好きなので、登山家になりたかったのですが、なかなか登山家の道というのは厳しいものでした。しかし、山で色々な人たちと出会い、あらゆるジャンルの話をしたという経験から、メンタルに関する勉強をしたくなり、鹿児島に帰ってきて精神科医を目指そうと思ったんです。それで医学部受験をしようと、家庭教師をしながら受験勉強をしていたのですが、教え子達が大学の医学部、歯学部、薬学部などに合格し、私が不合格という(笑)、そういう挫折を何回か味わいました。当時は個別の家庭教師の要望が多く、色々なところからオファーが来ていたので、それに対応するために天文館のアイムビル(鹿児島商工会議所)の裏に高校生専用の学習塾を作りました。そこからが自分のビジネスの始まりです。ですから、創業前に企業で働いたことがないんですよ。(笑)
その学習塾では、個別指導カルテのようなものをパソコンで作成していたので、色々なデータベースの勉強をしました。データ化して記録すると、生徒の欠点が明確にわかるようになり、「今からこんな時代かな」という思いで、今のIT分野の仕事を始めました。そのため、最初に取り組んだのは学習塾×システム開発でした。

Q.鹿児島で地域との関わりはありますか?

そうですね、地域に密着して地域を活性化するというお仕事をさせてもらっていますが、創業した頃はITを活用する人たちが少ないなと思いました。当社には教育部門があって、そこでIT分野の内容をメインに教えています。やはり、これからはデジタル人材を育てないと、地域は活性化しないと思っています。
また、地域の中で事業をしているからこそ気づける鹿児島ならではの課題がたくさんありますので、そういう部分をビジネスに結びつけることができるという点で、地域ならではのチャンスがあります。
例えば、以前の鹿児島市交通局のホームページに掲載されていた時刻表は、PDFを貼り付けてあるだけのものだったのですが、弊社がリニューアル業務を受託した際にWEBシステムを利用した時刻表や路線図を入れて、もっとわかりやすくするための改善を行いました。他にも、農業でのIT活用支援や、地域での観光資源に関する情報発信など、課題解決のためのお手伝いをしています。
枕崎市や薩摩川内市の拠点での人材採用や人材育成も行っており、地域の行政や産業と連携して課題を解決し、生活が豊かになるようなシステムを作っていくことがすごく大事かなと思っています。

Q.御社の特徴や魅力を挙げるとしたら、どういうところになりますか?

当社は経営理念として「社員ひとり一人の能力を活かせるビジネス環境を構築し、全員経営のもと、お客様、社員が共通利益を享受し、時代のニーズに応じたクリエイティブな仕事をおこなう」ということを掲げており、会社を支え、会社を発展させていくのは人だと考えています。仕事をしていく上で、誇りを持って自分自身の考えや思いを実現させていくためには、社員ひとり一人がお客様や社員同士の思いを理解していなければなりません。そのような人材を育成、採用していくためには、フォーエバーの業務のあり方と社会貢献の内容を明確にして魅力ある企業として発展していかなければならないと考えています。社員が仕事にやりがいを感じ、厳しさ、楽しさを体感しながら働ける企業を目指しており、そこに基づいた施策を行っています。
当社には若い社員が多く在籍していますので、資格取得などスキルアップの支援をしています。また、働く場所の環境づくりについても配慮しています。鹿児島中央駅近隣に拠点を構えたのも、社員の通勤のしやすさや利便性を考えたからです。その結果、JRやバス路線沿いに家を建てる若い社員も増えてきたり、遠方から通勤する社員もいて、そこも魅力かなと思います。職場環境にもさらに力を入れたいなと思っていて、本社の隣に昨年オープンした「Li-Ka1920」の「ライカワークラウンジ」を会社で利用契約しました。社員はそこで業務を行うこともできるので、ちょっとした気分転換をする社員もいます。また、今後は社内もフリーデスクにして、自社内の部門、グループを越えたコミュニケーションを図る計画も考えています。
昨年はリモートワークも実施しましたので、今後はこれらの経験をふまえて、通勤時間を無くした家庭内での働き方や、サテライトオフィスの活用など、新しい働き方の体制を構築しようと思っています。

もう1つの特徴は保育事業ですね。10年前から構想していましたが、やっと4年前の2018年に開園しました。若い人、特に女性社員が多いので、今後社員の子供たちも増えてくることを見込んで、「長く働けるように、保育のニーズに応えたい」という思いで取り組んでまいりました。ちょうど5年前に「働き方改革」として内閣府の企業主導型保育事業が開始されまして、私たちの提案が採択され、保育事業を始めたという形です。社員が全員子供を預けているわけではないのですが、近隣の連携企業の方や当社の男性社員が、お子さんと一緒に通勤して預けて、残業せずに連れて帰るという感じですね。

今はイクメンが増えてきていて、当社は男性の育休も率先して取得してもらっており、取得率100%という結果が出ています。また、時間単位での有給休暇もあって、例えば今日も一人「PTAだから2時間休ませてください」と2時間だけ抜けて会社に戻ってきた社員がいます。このように有休取得は率先してやってもらっていますね。また、会社を作った当初から、「誕生休」という特別有休もあります。誕生日の日じゃなくても誕生日の前後1ヶ月の間に自由に休みを取りなさいという制度です。そして、今年から実施するつもりなのですが、もっと休みが取りやすくなるように、会社から連続休暇を推奨し、連続した長期での有休も取得しやすくするということも考えています。

Q.今後の計画・ビジョン・プロジェクトなどについて教えて下さい。

今後の計画としては、地域ごとに拠点を作っていきたいと思っています。ただ、拠点を作るのは自社だけではなかなか難しいんですね。ですから、各地域のいろいろな企業や行政とコラボしていきたいなと思っています。まだ計画段階なのですが、鹿児島は多くの離島を抱えているので、そこでのデジタル人材育成も今後展開していきたいと思っております。
あとは厚労省が行っている、「ユースエール認定制度」というのがありますよね。その認定が受けられるように、若い人たちが働きやすい企業を目指そうと思っています。

Q.今回ジョブケーションという形で人材を受け入れていただく予定ですが、参加されるクリエイティブ人材にどういったことを期待されますか?

せっかく鹿児島に来てもらうのですから、鹿児島のことを考えて地域を豊かにしてくれるようなビジネスとかアイデアとかを出してくれる人材がいいですね。
あとは、鹿児島で働きたいなと最終的に思えるか、そこがすごく大事だと思うんですね。一過性のジョブケーションだと意味がないと思っています。ただし、それは来る人だけじゃなくて、こちらの責任もあります。受け入れる側も、自社の魅力を伝えてうまくマッチングしていくことが非常に大事かなと思いますね。
具体的な話だと、当社が事業の一つとして運営しているギャラリーの活用でしょうか。まだ企画展を2回位しかやっていないですけれども、貸しギャラリーとして、或いは自社企画としての活用方法を考えてもらえれば嬉しいです。地域に素晴らしいアーティストがたくさんいるので、その発表の場にするとか、養護学校の子供たちの作品展をやるとか、私たちも考えてはいるのですが、そういう企画を考えたりするのが好きな人が、お試し移住体験をしに来てくれたら嬉しいですね。
もちろん、地域課題を本業のIT系で解決するような面白い企画を考えてもらえる方も大歓迎です。そういう志を持った方々と、ジョブケーションでお会いできることをとても楽しみにしております。

本日はどうもありがとうございました。