船附 恵さん

株式会社D&AD
代表取締役 船附 恵 ふなつき めぐみ さん

鹿児島市ではクリエイティブ人材の誘致に力を入れています。
この企業インタビューでは、鹿児島への移住をお考えいただいたり、関心を持っていただいているクリエイターの皆様に、「働く街」としての本市のクリエイティブシーンの一端を知っていただくため、鹿児島市に拠点を置くクリエイティブ関連の企業に、事業内容や自社の魅力、鹿児島市ならではのやりがいについてお話を伺いました。

また、2025年2月には従来の観光型の移住体験に加え、地域企業でのクリエイティブワーク(付加価値を創造する業務)を通して「働く街」としての鹿児島を体感していただくことで、関係人口の創出を目指す『クリエイティブジョブケーション かごしまお試し移住プログラム』を企画しています。

「住む街」としての生活環境に加え、地域企業とのクリエイティブワークを通して「働く街」としての鹿児島を体感していただける企画ですので、 本インタビューを『かごしまお試し移住プログラム』へ応募する際の参考にもご活用ください。

Q.「株式会社D&AD」はどんな会社ですか?

お客様の「売りたい」をカタチにするデザインオフィスとして、ブランディングからダイレクトマーケティングまで、一貫して請け負う制作会社です。

大体、みなさん「デザイン」って、何かモノをつくる「意匠」を意味すると思われますよね。でも、私たちはクライアントの問題を解決することや、目標を達成するための計画を組み立てることも全て、デザインと定義しています。

クライアントにとって、目に見えるものを形作るデザインは、手法でしかないんです。

目指すゴールの達成のためには、ブランド価値をしっかり伝えるブランディングが必要になりますが、その設定や定義を作っていく上で、ダイレクトマーケティングのノウハウを活用しています。

Q.なぜそのスタイルを確立したのですか?会社設立の経緯もあわせて教えてください。

出身は国分(現・鹿児島県霧島市)なんですけど、学生時代から大阪に行って、広告代理店でデザインの仕事をしていました。その後、イギリスでデザイン系の大学院に留学して、鹿児島へ戻ってきた時に、働いていた職場で紹介された「かごしまデザインコンペ2006」で大賞をいただきました。

それがきっかけで、鹿児島でいろいろとお仕事の依頼を受けるようになり、今に至るという感じです。個人で5年、法人化して13年になりました。

仕事を始めた頃は、まだまだマーケティングやブランディングといったアプローチは珍しかったと思います。私がこれらのノウハウを培ったのが、通販業界での経験なんです。今から20年ぐらい前って通販業界にすごく勢いがあって、鹿児島にも有名な企業さんが数々あるんですけど、そういうお客さまに育てていただいたと思っています。

例えば、購入を促進してトライアルにつながったとしても、リピートにつながらなければマーケティングが成功したとは言えません。これって、商品を売るだけではなく、いかに「ファン化」できるかが鍵になると思っていて、マーケティングにおける分析に加え、企業価値を高めるブランディングが、結果的に売上に寄与する戦略的なアプローチの手法として欠かせないと考えています。

働いている様子

Q.クライアントワークにおいて、大事にしていることは?

多くのクライアントが、地元・鹿児島の企業ですが、業種はとても幅広いです。

当たり前かもしれないけれど、お客様の話をよく聞いて、整理して、「本当に必要なものは何か?」を深堀りして考える。対話しながら提案することを心がけています。

例えば、「WEBページをリニューアルしたい」という依頼を受けて「どんなものを作りたい?どんなことを伝えたい?」と聞いても出てこない。それは、企業側が実は自分たちのことをよくわかっていないことが原因。それなら、「ブランディングから一緒にやり直しましょう!」と提案する、という感じです。

ブランディングには、社外に向けたアウターブランディングと、社内に向けたインナーブランディングがあります。ここ最近、クライアントの経営者層とお話しすると、インナーブランディングが弱まっていて、対外的なブランドイメージはできているが、社内で理念のようなものがない、浸透していない、という課題も耳にします。

その場合、セッション形式でインナーブランディングに関する研修を行うこともあります。だいたい半年〜1年かけて、社員のみなさんと定期的にセッションを設け、3C分析やSWOT分析などマーケティングを通して、ブランディングを考えていきます。そして、最終的には、社員から経営者幹部に企画提案をプレゼンしてもらいます。そうすることで、自然と社員の目的意識も一致しますし、インナーブランディングが必ず浸透していきます。

その後、どんなアウトプットがよいのか、その枠組みを作り、クリエイティブに落とし込むのは私たちの仕事です。コピーライターやカメラマン、映像クリエイターなど、うちで各分野のプロフェッショナルをコーディネートして仕上げていきます。

私自身にも、会社のメンバーにも言い聞かせているのが、「100点は0点と同じ。いつも105点を取っていこう」と。要は、相手の依頼したことをただやるだけでは、心に残らない。大幅に行き過ぎるものは理解されない。だから、相手の想像をちょっとだけ超えられる仕事をしていくこと。生き残るために(笑)。これは常に意識していますね。

働いている様子

今回は、ここから社員の永澤美友さん、橋野愛さんも加わりお話しを伺っていきます。

Q.どんなメンバーが働いていますか?担当業務なども教えてください。

船附さん:メインは私と、社員の永澤、橋野の現在3名です。永澤は新卒入社で10年、橋野はアルバイトから中途採用で6年ぐらいかな?ふたりとも長く勤めています。
各々が担当案件を持って、企画提案・予算交渉・外注スタッフのアサインなど、一連して行います。

永澤さん:自分の担当はありますが、常にチーム全体でディスカッションしながら進めています。そのとき上下関係はいったん取っ払って、クライアントのゴール達成のため、何がベストなのか、各々が思うことを自由に意見し合える職場です。

橋野さん:私は、デザイン制作作業に加えてリリースやSNSを活用する広報サポートをやっています。広報領域は、案外弱い企業さんも多いんです。もともとSNSで発信することは好きだったんですが、講習を受けて基礎から学ばせてもらって。趣味が生かせて楽しく仕事をしています。

船附さん:この仕事はチームスポーツだと思っています。各々責任感を持って取り組みますが、1人だけで完結することはありません。いい意味で上下もなくて、私に対しても全然容赦ないメンバーです(笑)。また、個人がスキルアップのために学びたいというものがあれば、それは会社にとっても武器が増えることに繋がるので、積極的に取り入れています。

働いている様子

Q.ほかにはない御社の強み・魅力は何だと思いますか?

船附さん:ダイレクトマーケティングに基づいて、数字で根拠を表現できるところですね。
デザインの分野って「正直、わからない」というクライアントは多いんです。でも、事業における目標数字に対して、どうアプローチするかの意見はできる。同じゴールを目指す伴走者としてその過程を理解して、ビジネスで本当に機能するデザインに落とし込むというのは、うちの強みだと思います。「デザインコンサル」と勝手にネーミングしています(笑)。
事業計画から経過観察、効果の検証もするので、長いお付き合いになる企業も多いですね。

永澤さん:見た目のデザインって、落としどころがない、そういう世界ですよね。だからこそ「なぜ?」「どういう意味がある?」「根拠は?」と、深く考えて言葉にするって、すごく大変ですけど、結局それはお客様に説明できなきゃいけないことなので。議論して、3人の脳みそで徹底的に考えて提案します。

橋野さん:そうですね。入社するとき会社の実績を見て、「なんだかおしゃれな仕事できそう」ぐらいの感じだったので、最初は「なんじゃこりゃ…」とも思いましたよ(笑)。理解するのに少し時間はかかりましたけど、その意味がわかってくると、おもしろい!ってなりましたね。

永澤さん、橋野さん、ありがとうございました。

Q.今後のビジョンを教えてください。

ブランドの価値を高めて、ターゲットの数と行動を促す、「ブランディング×ダイレクトマーケティング」。この精度をもっともっと上げていくこと。これは、ノウハウと経験の積み重ねが必要なので、繰り返しにはなりますが、まだまだ高確率に伸ばせる自信があります。

この考え方が企業の競争力を上げて、鹿児島の地域経済の活性化にもつながっていくと考えています。そんな地域のお役に立てる企業であり続けたいです。

Q.鹿児島でクリエイティブの仕事をするメリットってどんなことがありますか?メッセージなどあれば、ぜひ。

いろんなことを主体的にやりたいなら、地方のほうがいいと思います。

私も大阪時代は大きな会社で、部隊の1人として歯車化して、とにかく目の前の作業をこなす感覚でした。もちろん、有名クライアントの仕事で事業規模も大きいので、そこに関わることに価値を感じる人もいると思いますが。でも、クライアントとのコミュニケーションを軸に、課題に対する提案を作っていきたいって人なら、鹿児島はお勧めですね。

そして、私たちの会社に興味を持っていただけたら、光栄ですね!

社員たち

聴き手:瀬戸口奈央