
株式会社オービジョン
代表取締役
大薗 順士
さん
鹿児島市では、首都圏などに集中するクリエイティブ人材の誘致に力を入れています。このインタビュー企画では、鹿児島への移住を検討中の方や、関心をお持ちのクリエイターの皆さまに向けて、「働く街」としての鹿児島市の一端をご紹介します。
登場するのは、鹿児島市内に拠点を置くクリエイティブ関連企業の皆さま。各社の事業内容や魅力、そして鹿児島だからこそ感じられる“働きがい”について、お話を伺いました。
また、2025年12月には、観光型の移住体験に加えて、地域企業とともに実際のクリエイティブワーク(価値創造に関わる業務)に取り組んでいただく『クリエイティブジョブケーション
かごしまお試し移住プログラム』を実施予定です。
「住む街」としての鹿児島の暮らしにふれながら、「働く街」としてのリアルも体感できる貴重な機会となりますので、本インタビューがご自身のライフスタイルを見つめる一助となれば幸いです。
ぜひ、プログラムへの参加をご検討の際の参考としてもご活用ください。
Q.株式会社オービジョンは、どのような会社ですか?
オービジョンは、「地域と共に価値をつくり、届ける」ことをミッションに、鹿児島の一次産業を起点とした事業を展開する会社です。主力ブランドである〈かごしまぐるり〉を通じて、地域の生産者と連携し、食を中心とした商品や体験を全国へ発信しています。
ECサイト運営をメインとしつつも、マルシェや食育イベント、飲食店・海外への販路開拓など、多角的に活動しています。地域の“いいもの”を見つけて磨き、それを丁寧に伝えていく──そのプロセス全体をデザインするような事業を行っています。
Q.会社を立ち上げたきっかけは?
実家が農家で、ものづくりや一次産業の現場は昔から身近な存在で、楽しさも感じていました。ただ、地域には魅力的な資源がたくさんあるのに、価値が正しく伝わらないまま埋もれているケースも多く、それに起因して辞める農家もいて、新しく就農する人も減り、そうすると耕作放棄地が増えて、みたいなところに漠然と課題意識は持っていました。
15年ほど勤めた鹿児島市内の通販会社で、広告・広報・ECなどを経験してきたこともあり、「このスキルを活かしてもっと地域の役に立ちたい」と思うようになりました。結婚・子育てなどのライフステージの変化もあって、40歳を前に起業を決意しました。
今振り返れば、勢いで起業したところも大きかったので、想定外のこともたくさん起こり、紆余曲折ありながらでしたが、なんとか楽しくやって来られました。

Q.オービジョンという社名には、どんな想いが込められているのでしょう?
鹿児島の地域や食、つくり手の魅力を再発見してもらいたい。
単にモノを売るECではなく、五感で楽しめる「体験」も届けたいという想いがあります。
旅のように自由なスタイルで地域をめぐることで、訪れた人にも「この場所だからできること」「この人と出会えてよかった」と思ってもらえるような、温かい体験を届けたいと考えています。
以上のような大きなビジョンを持って事業をしたいと思い「オービジョン」と名付けました。
あと、大薗の「大」もかかっています(笑)

Q.社内メンバーはどんな人たちですか?
現在のメンバーは社員4名を中心に、デザイナーや広報、営業など多様な専門性をもった業務委託メンバーが関わっており、合わせて12名ほどで運営しています。
一人目の社員は愛知県出身で、奥さんが鹿児島出身で、何回か遊びに来ているうちに鹿児島が好きになって、そんなタイミングでたまたまご縁が繋がって移住&入社してくれました。ほかにも、地域に根ざした経験を持つ人や、都市部での経験を活かす人など、バックグラウンドはさまざまです。
ネットショップの運営や、カスタマーサポート、デザイン業などの中の仕事と、生産者さんや連携・協業している企業さんのところへ訪問したり、営業・広報周りなどは外の仕事としてやっています。
一人ひとりの裁量が大きく、みんなが自分ごととして仕事に向き合っていて、共通しているのは、「食が好き」「鹿児島が好き」「何かを広げたい」という前向きな気持ちです。
それが日々の原動力にもなっています。

Q.生産者の方々とはどのように繋がっていったのでしょう?
最初はまったくのゼロからでした。〈かごしまぐるり〉というシステムはありましたが、認知はされていなかったので、県内各地を回って、アポなしで農家さんの畑を訪ねるところなどからスタートしました。新聞やネットで見かけた情報を頼りに、直接会ってサービスを説明してと、とにかく足を使いましたね。
そのうち徐々に「面白いことをやっている」と紹介してくださる生産者も増え、今では地域を超えてネットワークが広がりつつあります。鹿児島出身ということで親近感を持ってもらいやすいのも、大きな強みだと感じています。
生産者さんから「○○さんにも紹介したよ」と言われたり、口コミでつながっていく感覚がとても心地よいです。地域には“人”を介した流れが確かにあって、そこに信頼が宿っていると実感します。
Q.今後の展望について教えてください。
まずは鹿児島県内にまだまだ眠っている“いいもの”を、もっと掘り起こしていきたいと思っています。鹿児島は離島も含めればまだまだ自分たちも知らない魅力がたくさんあるので、それを発信していくことが今の一番の目標です。
また、〈かごしまぐるり〉で得た知見や仕組みを、他の地域にも展開できないかと考えています。同じような課題を抱える地域と連携しながら、横展開していくことで、日本のローカルがもっと元気になると思っています。
Q.地方でクリエイティブな仕事に関心がある人へメッセージをお願いします。
地方には、すでに“いいもの”がたくさんあります。でもそれが伝わっていないだけ。そこをどう見せるか、どう伝えるか?その鍵を握っているのがクリエイティブの力だと思います。
モノがいいからこそ、嘘のない表現ができる。自分たちも日々、生産者のこだわりを肌で感じながら、「どうすればこの魅力がもっと伝わるか」を考え続けています。
鹿児島は、食の豊かさも、人のあたたかさも、誇れるものばかり。そんな土地で、ぜひ一緒に何かを仕掛けていきたい人に出会えたら嬉しいです。

株式会社オービジョン
https://ovision.jp/
かごしまぐるり
https://gururi-japan.com/
聴き手:ALUHI 小林史和