【クリエイター対談 vol.4- 黒瀬優佳× 小林史和】

鹿児島市ではクリエイティブ産業振興の一環としてクリエイターの移住促進に力を入れています。2022年度は、ここ数年で鹿児島にUIJターンしたクリエイターの方々に2人ずつ登場していただき、鹿児島へのUIJターンを経験した中でのおすすめポイント、苦労話やクリエイティブシーンについて対談していただいています。4か月連続、全4回の動画で生の声をお届けしていますので、是非ご覧ください。

公開日時:2022/08/10

黒瀬優佳

1988年鹿児島市生まれ。高校卒業後、宮崎、福岡、東京を経て3年前にUターン。大手広告代理店の営業から転職し、株式会社BAGNで地元鹿児島を拠点に企業や行政事業、商業施設キャンペーンなどの企画・制作を担当するほか、展覧会や公共施設の制作進行を担う。鹿児島市ではクリエイティブ産業創出事業や、かごしま文化情報センター/KCICの企画・運営に従事。
https://bagn.jp/

小林史和

1979年生まれ。山梨県甲府市出身。 2016年いちき串木野市地域おこし協力隊として鹿児島へ移住。 鹿児島を選んだ理由は「焼酎が好きだったから」。いちき串木野市を伝える冊子『ALUHI(あるひ) 』を2018年に発行。 協力隊任期終了後も、いちき串木野市の地方創生事業の支援や、編集・ライティングなどで活動中。 2021年2月、『まちとひとを伝えるもっとも最寄りな場所へ』をコンセプトに、鹿児島市城山町にカフェ「momoyori(ももより)」をオープン。
https://www.instagram.com/_momoyori/

■現在の活動とライフスタイルなどについて

黒瀬:こんにちは、株式会社BAGNに所属している黒瀬優佳と申します。私は鹿児島市生まれで、宮崎の大学へ進学し、卒業後は福岡の広告代理店の営業として社会人生活をスタートしました。その後、今の勤務先であるBAGNに転職し、東京に引っ越しましたが、鹿児島のお仕事が結構あったので、鹿児島と東京を行ったり来たりしていました。
3年前にBAGNが鹿児島に事務所を設けることになったので、自ら手を挙げて、鹿児島に帰りますという形で戻ってきました。Uターンになります。今日はよろしくお願いします。

小林:こんにちは、小林史和といいます。私は出身が山梨県で、以前は鹿児島には来たこともなかったのですが、地域おこし協力隊制度がきっかけで6年前ぐらいに鹿児島に移住して来ました。協力隊は3年で終わったのですが、引き続きご縁がありまして、鹿児島に居させていただいています。編集・ライティングや地域と関わるお仕事をしたり、鹿児島市内にカフェを運営したりなど、色々と楽しくやらせてもらっています。今日はよろしくお願いします。

■UIJターンのきっかけについて

黒瀬:多分、小林さんもご存じだと思いますが、うちの会社BAGNの代表が鹿児島出身という事も大きいと思うんです。その代表の縁で、鹿児島の仕事が自然と増えてきたんですね。私自身、学生時代に鹿児島を出ていて、同級生と会う機会もそんなに無かったので、鹿児島には多分仲間はあまりいないなと思っていました。しかし、お仕事を通じて鹿児島で色々な人と出会うきっかけがあって、大人のコミュニティというか鹿児島の人との関わりが出来たので、これだったら帰って来てもいいかなと思うようになりました。あとは仕事ですね。もしこちらに来て仕事が無かったとしても、自分で作るという意気込みを持って帰って来たという感じですね。

小林:元々、帰って来たいという気持ちはあったんですか?

黒瀬:そうですね。やっぱり鹿児島が大好きだったので、本当は出たくなかったのですが、自分が働きたい場所が鹿児島にちょうど無くて、一回外に出てみようかと。とはいえ、九州圏内の福岡で社会人スタートだったんですけど。当時の会社には鹿児島支社への配属希望をずっと出していて、「辞めます」と言った時に、会社が「お前を鹿児島に配属しなかったから辞めるのか」みたいな感じになったんです(笑)。「いや、そういう事ではなくて」と思いながらも、今の会社に入るきっかけも、鹿児島の繋がりがあったからですね。「これをきっかけに、また鹿児島に帰れる可能性があるのではないか」と思っていました。そして東京で働きながらも、やっぱり周りに「鹿児島帰りたいなぁ。いつか」って言っていました。そしたら、そういう仕事も増えてきたし、気付いたら帰って来れたなっていうのがすごくありますね。

小林:ずっと言っていくことは大事ですよね、「私これ欲しい」とか。

黒瀬:それで自然と希望が叶いましたから、「言霊」って言うんですかね。そういうことをどんどん言っていった方が何かに繋がるなという気がしました。
小林さんとは、鹿児島で一緒に仕事をする機会もあって、時折こういうお話しする時間もいただいているんですけど、Iターンで鹿児島に来られたって凄いですよ。

小林:凄いですよね。縁もゆかりもなく、鹿児島に来たこともなかったけど、焼酎が縁ですかね。山梨にいた時に芋焼酎を初めて飲んで、最初はぶっちゃけ、「不味い」と思ったんですよ。でも友達がやっているお店で焼酎がちょっとずつ扱われ出して、そのお店に行くたびに「こんな焼酎を仕入れたんだよ」って飲ませてくれるようになって、それで飲んでいるうちに慣れてきたのか、美味しく感じるようになったんですね。

黒瀬:香りとか癖がありますけど馴染んできたんですね?

小林::そう、体が馴染んできて、芋焼酎は体質的に次の日に残らないので、合ってるかもって思っていたんです。そしたら、僕が美味しいと思って飲んでいた焼酎の蔵がある、いちき串木野市が地域おこし協力隊を募集していたので、もうノリで履歴書を書いて送ったんですね。するとすぐに電話がかかって来て、採用の方向で進めますというような連絡がありました。

黒瀬:早いですね(笑)

小林:こっちのノリが良ければ、そっちのノリもいいのかなみたいな感じで、そこから本当に1か月ぐらいでバタバタと荷造りして引っ越しをしたんですよ(笑)

■暮らしについて

小林:鹿児島の人はみんな、焼酎を飲んだらより楽しくなる感じなので、飲みの場で仲良くなった人も沢山いて、飲みニケーションってこういうことなのかと感じますね。

黒瀬:日本酒は一人でちびちび飲むイメージだけど、焼酎はたくさんの人で囲みながら飲んでいるというイメージです。私の家でも、昔からおじいちゃんの近くに寄ると芋焼酎臭かったりしたんですよね。常に家には焼酎が置いてあって、それを切らしたらおばあちゃんが怒られるというのが鹿児島の家族の形、というイメージもあるかもしれないですが、焼酎はやっぱり素晴らしいですね。

小林:いい文化ですよね。

黒瀬:そうですね、福岡や東京にいた時もそうでしたが、鹿児島の人って集まりやすいというか、鹿児島県人会とかグループみたいなものが色々な所であるんですよ。私は東京で暮らし始めた時に、それぞれ種類の違う3つ4つの鹿児島県人会に誘われました。「何だろうこれ」と思いましたが、要はみんなで焼酎を囲んで飲むという集まりなんです(笑)。東京の渋谷にある鹿児島料理を出してくれるお店で集うというような事もよくありましたね。
みんなでよく寄り合う気質なのは何でだろうって思った時に、鹿児島の人達は桜島とか温泉とか、共通の好きな物があるという事が結構大きいのかなと感じました。例えば、昔はみんな同じテレビ番組を見ていたじゃないですか。それで同じ話題を話せて、みんな一緒だよねっていう感覚を持っていたと思うんですけど、それが今は時代的に無くなってしまいましたよね。鹿児島には、桜島とか温泉とか、みんなが共通して味わえるものがあるから、自然と顔を知らない人とかでも、鹿児島に住んでいること自体がみんな仲間だよねという雰囲気を作り出しているのかなっていうのは帰って来てすごく思いました。

小林:鹿児島の人って、鹿児島が大好きな人がめっちゃ多いイメージですね。

黒瀬:そうですよね。私も、みんな何でそんなに鹿児島が好きなんだろうとか思います。「ASH」という、クラフトデザインアンドクラフトフェアというイベントをやっていても、同じ業種の人が集まって協力しているんです。県外ではそういうことはなかなか無いと思いますし、どちらかというと、ライバル視し合うということを聞いたことがあります。なので、「鹿児島の人って、めっちゃ集まるよね。」とか「仲いいよね。」ということを、みんな感じている気がします。

小林:ライバルというより、お互いがいい刺激を与え合っているという印象がすごくあります。

■仕事について

小林:多分よく聞かれると思うんですけど、クロユカ(黒瀬さんのニックネーム)ちゃんの会社って、何をしている会社ですか?

黒瀬:ああ、それ一番苦手な質問ですよ。会社で、ホームページや名刺を作る機会があった時に「何か肩書きがあった方がいいんじゃないか」という話になったんですけど、みんな、「自分の肩書きってなんだろう」って。
私は、ホームページでは「プロデューサー、時々ディレクター」と書いたり、名刺では「コミュニケーション・ディレクター」とか書いたりしていますが、「なんだそれ」と感じたり、余計分からなくなったりしますね。
でも、何か新しい物事を生み出す、創り出すという分野にはいるのかなと思っています。ただ、あまり自覚がなくて、今回のクリエイター対談にお声掛けいただいた時にも、「私ってクリエイティブの人なんだ」という感じでした。自分がプロデューサーと名乗っていれば、それはそれで仕事が来るし、エディター(編集者)と名乗っていた時期もあり、鹿児島で「書く」機会とかもあるんです。
名乗っていれば、その仕事が来ることもあるかなと思っています。小林さんもプロデューサーであり、エディターでもあるんですよね。
「クリエイティブ」って広い意味がありますが、鹿児島ではちゃんと広い意味でクリエイティブなことが名乗れるので、すごくやり易いと思っています。
東京では「ガチでその肩書の人です」みたいな名刺を持って歩く人がいるから、恐れ多くて私はそれを名乗れないんですけど、鹿児島だと割と自由に出来ますね(笑)。

小林:でも、それもいい所と悪いところがあって、東京だと分業されているけど、鹿児島だと分業されていない部分が多い気がします。鹿児島では分業しようと思っても出来ないから、「あんまり専門じゃないんだけどな」っていう分野でもやらざるを得ない機会とかがたくさんあるのかなと思います。まあ、それはそれでいいバランスで成り立ってる気はしています。
この間、山梨の先輩が二人遊びに来て、半分アテンド、半分仕事みたいな感じで、行った先行った先でめっちゃ買い物をしていました。なんてことない道の駅で1万円ぐらいの買い物をしているんですよ。

黒瀬:鹿児島で一万円というと、大分買えそうですけどね(笑)。

小林:「そんなに買ってどうするんですか。」って聞いたら、「なんかすごいテンション上がってきちゃって」とか、「なんかを試食したら美味しかったから」って。
「美味しかったから」って買う量じゃないんだけど、何十個も買ったりとかしていて。でもそういうのも、鹿児島の空気感みたいなものがそうさせるのかなって、ついこの間感じたばっかりでした。

黒瀬:うんうん、それで帰った先に、何かまた鹿児島の良さを勝手に広めてもらえるみたいな。それはすごくあるかも。

小林:「これお土産だよ」みたいなね。

黒瀬:あと、「暮らし」と「仕事」について、結構境目がなくなってきているというのは、鹿児島で仕事をしていて思うところですね。

小林:僕もそうかもしれないね。鹿児島って仕事とプライベートの境目が分からなくなっている。

■未来について

黒瀬:小林さんは、鹿児島の移住拠点はいちき串木野市ですが、今は鹿児島市でもカフェを運営して、二拠点生活をされていると思います。今後の暮らしとかクリエイティブへの思いなどについて、思い描いてるものはありますか?

小林:今後のクリエイティブって言われると括りが難しいね。僕も今回「クリエイター対談」という枠で呼んでもらって、ちょっと疑問を残しながら来ています。でも大きい枠で考えれば、「イラストを描く」とか、「WEBを作る」とかだけではなくて、暮らし方とか、生活全てを自分の暮らしやすいように設計したり、編集したりというのも含めてのクリエイティブだなって、うまく解釈しているところです。
そういう意味で言えば、県内二拠点生活を始めたのも、自分が楽しいと感じながら暮らしやすくするためだったりもします。
今、いちき串木野市内での拠点をちょうど移しかけているところです。その引っ越し先を拠点に事務所を作ったり、ゆくゆくは鹿児島市でやっているような、カフェまでは行かないけど、ドリンクスタンド的なものが出来たらいいなとか考えています。
そういう事はぼんやり考えているけど、リアルなことを言えば、明日の生活を考えないとね。
でも、毎日楽しみながら生活出来ているというのは、鹿児島に来て良かったことですね。夜寝る前とかにたまに感じることではあるんですけど、そんな感じで引き続き何か楽しくできたらいいなと思っています。
でもそんな中、クロユカちゃんには、僕の今の仕事と密接に関わってもらったり、色々なところで助けてもらったりもしているので有難いです。
クロユカちゃんは今後どうしていきたいとか、ビジョンみたいなものはありますか?
確か、クロユカちゃんの出身は坊津だっけ?

黒瀬:そうですね。おばあちゃんとおじいちゃんの家が南さつま市の坊津にあります。鹿児島に帰ってきて結婚したのですが、夫がそこで農業をしています。農業ってそれこそ鹿児島らしいし、鹿児島と密接に関わっているなと感じているところです。最近、果樹園を始めたので、土日で行ける時には行ってお手伝いをしていますね。夫は「坊津へ来て欲しい、手伝って欲しい」と言っているので、小林さん同様に、県内二拠点生活というのを描きつつあるかなと思っています。
あと、元々鹿児島に帰りたいという気持ちは強かったのですが、性格がじっとしていられないタイプで、机の上でずっと何かをやるっていうのは無理なんです。色々な所を動きながら、それこそクリエイティブな事を発想したり、色々なことを巡らして考えるというのが自分のスタイルなので、そういうふうにやっていきたいと思っています。鹿児島県内でも、私たちがいる薩摩半島だけでなく、大隅半島にも目を向けるともっと視野などが広がるだろうし、そういった所でまだまだできる事、やれる事がたくさんあるんじゃないかなと思っていて、ワクワクが続いている気がします。

小林:そこにいる人との出会いとかもあると、また新たな発見にもなったりして。

黒瀬:クリエイティブなことは、みんな何かしら持っているし、誰でも関わっていいし、誰でも創造する事が自由にできると思うんです。「自分はクリエイターとは違うな」ではなくて、日頃考えている事を発言するというようなことでも、クリエイティブな発想によってチームがうまく機能して仕事が前に進むし、ネガティブな事って出て来なくなるんですよね。
みんなが前向きにやるためにはどうしようとか、そういった事も、クリエイティブな発想を持ってみんなが関わっていけば、ある意味みんなクリエイターだなって私は思っています。自分が何か言うことで場が動くんだったら、その場のクリエイターみたいな、その場を作った人みたいな事になる。
ある意味本当に広義的過ぎますが、そういうふうにして、みんなが一線を引かずにクリエイターという分野に入ってきて、焼酎を飲みながら色々なアイデアで鹿児島を楽しくしていこうよっていうのが湧き上がれば、もうそれでオッケーという気がしています。

■動画をご覧のみなさまへ。

黒瀬:お聞きいただき、ありがとうございました。何か迷ったり困ったりしたら身近な人に話すことで、色々な輪が広がる可能性が鹿児島はありますし、多分ハードルが相当低いという気がします。
みんな、気に掛けてくれる、ある意味おせっかいな人が多い気がするので、自分が居心地の良い場所というのを見つけて、そこからどんどんクリエイティブな発想を広げていけば、暮らしも豊かになって、自分も幸せになるのかなと考えています。
私とか小林さんを見かけたら、小林さんは特にカフェを持っていらっしゃるのでそこで会う機会もあるかと思いますが、是非その時は焼酎を飲みましょう。あ、やっぱり(小林さんの故郷である)山梨のワインでも良いかもね。楽しく時を過ごせればいいなと思っています。
まだ出会ってない方にもお会いしたいなと思っていますので、よろしくお願いします。

小林:今日はありがとうございました。僕はIターンで、鹿児島には縁もゆかりもありませんでしたが、こういうクロユカちゃんとか、街行く人みんな、本当におせっかいっていうぐらい優しくて。何故かそういう人たちが多い県だなっていうのは肌感覚で実感しています。なので、移住というとハードルが高い方もいるかもしれないですが、一回遊びに来ていただければと思います。僕のお店でもいいし、声を掛けてもらえれば、タイミングさえ合えばアテンドしたりしますので。一回も鹿児島に来たことがない人は遊びに来てもらうのが早いかなと思っています。
そうすれば人柄や気候とかも含めて、こういう場所なんだというのが一番分かりやすいと思うので、是非その際はお会いできたらなと思います。今日はありがとうございました。