【クリエイター対談 vol.6- 門間ゆきの× Wayan】

鹿児島市ではクリエイティブ産業振興の一環としてクリエイターの移住促進に力を入れています。2023年度は、ここ数年で鹿児島にUIJターンしたクリエイターの方々を中心に2人ずつ登場していただき、鹿児島へのUIJターンを経験した中でのおすすめポイント、苦労話やクリエイティブシーンについて対談していただいています。全4回の動画で生の声をお届けしていますので、是非ご覧ください。

公開日時:2023/08/01

門間ゆきの

「自分たちのまちを自分たちが知る」をテーマに、鹿児島市名山町を拠点に子どもたちと「名山新聞」を月刊発行している。1993年生まれ、愛知県名古屋市出身。2017年に鹿児島の南日本新聞社に就職し、名山町にIターン。記者職を経て、2021年4月からフリーランスとなり、一般社団法人テンラボ・九州地域間連携推進機構株式会社で、「移住ドラフト会議」「踊りたくなる九州卒業論文コンテスト」など、地域と人をつなぐ企画に携わる。
https://www.instagram.com/meizan_news/

Wayan

1997年生まれ東京都出身。19歳でカナダへワーキングホリデーに行き、日本とカナダの性教育に対するギャップを知る。帰国後デザインを独学で習得し、フリーランスでデザインを通して性教育の重要性を広める活動をスタート。会社の立ち上げを経験したのちにZ世代向けの企画マーケティング会社にてクリエイティブディレクター、プロジェクトマネージャーに従事。同時期に「かごしま」と「まちづくり」の魅力に出会い、2023年2月に移住。
https://www.instagram.com/y_52_wayan/

■現在の活動とライフスタイルなどについて

門間:門間ゆきのと申します。愛知県名古屋市出身で、今は鹿児島市名山町に暮らしております。今日は、私がお話ししてみたかったWayanさんとこのような機会をいただきました。
よろしくお願いします!

Wayan:私は、ちょっと変わった名前なんですがWayan(ワヤン)と言います。東京都出身で、鹿児島には2年前くらいから関わっていて、実際に住み始めたのは去年の7月ぐらいです。完全に移住したのは今年の2月になります。
よろしくお願いします!

門間:鹿児島暮らしは約1年ですか?

Wayan:そうですね。

門間:私は今6年経ちました。

Wayan:めちゃめちゃ先輩ですね!

門間:小学校を卒業したぐらいですね(笑)

■UIJターンのきっかけについて

Wayan:「一緒に会社を立ち上げよう!」と話をしていた人が、鹿児島大学を休学して東京に来ていた人で、その人が鹿児島(大学)に戻るとなった時に、「一緒に会社やるんだったら私も鹿児島行った方が良いな」と思って鹿児島に来ました。
最初は、鹿児島大学水産学部の裏にある物件で4人でシェアハウスをしました。そのうちの1人が今一緒に会社をやっているメンバーで、その人からのお仕事の誘いなどもあり、もうどんどん鹿児島に巻き込まれていって、気づいたら移住していました(笑)。
ゆきのさんは6年前ですよね?

門間:はい、そうです。私は新卒で鹿児島の新聞社に就職したので、最初のキャリアは鹿児島からスタートしました。その新聞社に4年間勤め、今フリーランスになって2年です。
鹿児島と出会ったきっかけは、就職活動時、「新聞記者になりたい」という希望だけはありましたが「場所はまぁどこでもいいかなぁ」と思っていました。そんな時、大阪に、北から南までの地方紙を扱っている場所があり、そこでたまたま手に取った鹿児島の南日本新聞を見て、「他の地方紙と比べて山あり海あり、火山、離島、宇宙と、なんてネタが豊富なんだ!」と思いました。

Wayan:わかる〜〜。

門間:こんなにネタにあふれる地域は絶対に面白そうだなと思って!しかも、ちょうど社員募集の記事も載っていて (笑)。

Wayan:「ラッキー!」みたいな。

門間:そう、それで受験することに決め、9月に採用試験を受けに来て、その約半年後に鹿児島に移住という流れです。

Wayan:私は移住するにあたって2年程前から準備を重ねて、人とコミュニティに関わりながら色々な人を紹介してもらったりと、準備期間が結構あったのですが、ゆきのさんはいきなり鹿児島に来て不安とかはなかったのですか?

門間:採用試験の時、筆記試験から最終面接まで、6泊7日で鹿児島に滞在したんですね。その期間にとにかく色々な人に会って、まだ内定も出ていないのに「鹿児島に住むぞ!」って思えるぐらい濃厚な6泊7日を過ごしたんです。すごくお世話になって家族みたいな人ができたりして、「よし!じゃあ、次に来る時は住む時だ!」という気持ちになっていたら、めでたく内定をいただきました。
期間は違うけれど「人に惹かれた」というところは同じかもしれないですね。私はギュッと6泊で、Wayanさんは2年間でゆっくりって感じで。

Wayan:そうですね。

■暮らしについて

Wayan:今、桜島が見えて海も近いところに住んでいるんですけど、東京にいたらそこまで身をもって自然を感じる機会ってあまり無くて。鹿児島のそういう場所に住み始めてからは、わざわざ朝4時に早起きして、海まで走って、桜島の後ろから朝日が昇るのを眺めたりしています。
今朝も友達に誘われて市場へ行って、こんなに大きい(両手を大きく広げた大きさの)太刀魚を買って、家で捌いて朝ごはんとして食べてきました。

門間:すごい!

Wayan:そういう本当に身近なところに「生」を感じます。自然もそうだし、生き物もそうだし、「生」を感じる機会がすごく多くて、何に対してもありがたみを感じる機会が増えました。お金をかけなくても手間をかけることで幸せだなと感じることが、東京にいた時よりもたくさんあって、心も穏やかに過ごせています。

門間:確かに。

Wayan:6年名山町に住んでいる中で、お気に入りのポイントはありますか?

門間:名山町という、鹿児島市役所からすぐ近くのまちに住んでいるんですけど、昭和レトロなまち並みで、人付き合いがちょっと懐かしい感じのところです。私、昭和に生きたことはないんですけど(笑)、昭和っぽいらしいです。

Wayan:本当にいいまちですよね。すごくわかります!

門間:本当に人との距離が近いんですよね。「行ってらっしゃい」、「行ってきます」、「おかえり」みたいな感じで。小さいまちなのですが、自分の家から市電通りに出る間にたくさんの人に会います。でも会っちゃうと話しちゃうから、急いでいる時はできるだけ人に会わないように駆け抜けないと約束に間に合わない!(笑)そのぐらい人が話しかけてくれるまちですね。

Wayan:鹿児島でびっくりしたのが、全然知らないおじいちゃんやおばあちゃんとかが、昼から夕方ぐらいまでずっと喋りかけてくれること。すごく楽しいんですけど、急ぎの時はちょっと困りますよね(笑)
鹿児島ならではのことで、大変だったことは何ですか?私はまだ遭遇したことがないのですが「ドカ灰」とか?

門間:「ドカ灰」は何度かありましたよ!
このメガネは鹿児島のメガネ屋さんでつくったものですが、メガネ屋さんが私にメガネを渡す時に「県外から来たから注意点だけど、メガネは拭いたらダメだよ。まず水で流さないと灰でレンズが傷つくからね」と親切に教えてくれました。

Wayan:火山灰に含まれる二酸化ケイ素ってガラスですもんね!

門間:そう!灰が降っている時、私はメガネに少し守られているけれど、裸眼とかコンタクトだと目がすごく痛いと思う。

Wayan:痛いですよね!昨日も少し痛かったです。

門間:それに、自転車のタイヤは滑るし、市電も車も危ないから止まるし、窓を閉めているのに部屋の中がザラザラするみたいな。

Wayan:部屋の中に入ってきますよね!ホウキを使って掃除したりして(笑)

門間:「ドカ灰」はまだ経験がないんですね。

Wayan:「ドカ灰」はないですが、私は東京と鹿児島を行き来する生活をしているので、久々に帰ってくると自転車に灰が積もっていたり、ベランダのスリッパがザラザラしていたり、今日はちょっと外に洗濯物を干しづらいなとかで、桜島の火山灰を日々感じますね。

門間:灰だけはねー。あまり良いものではないって思う(笑)

Wayan:ほかに鹿児島っぽいものだと「あくまき」っていう食べ物もありますよね?まだ食べたことないんですけど(笑)

門間:とても美味しいですよ!

Wayan:本当ですか?

門間:実家にお土産で持って帰ったらびっくりされましたけど、美味しいので私は好きです。

■仕事について

Wayan:今、2つ仕事をしています。1つは、5月13日に鹿児島で立ち上げた、「地方創生クリエイティブカンパニー」です。学生と一緒にクリエイティブ思考を育てていきながら、『鹿児島を世界一クリエイティブな街にしよう!』というビジョンを掲げて取り組んでいます。
もう1つは、私がフリーランスでやっている仕事です。インスタグラムのフォロワーを増やすための戦略などを考える“SNSマーケティング”や、ブランドの立ち上げやブランドの軸となる戦略を考える“ブランディング”、手を動かす仕事では、チラシや名刺やロゴの“デザイン”などをしています。また、「クリエイティブなものをつくる」となった時に、世界観や方向性を決めて進行していく“クリエイティブディレクション”と呼ばれる役などもやっています。結構手広く色々なことをやっていますね。

門間:それは鹿児島に移住してくる前から東京でやっていた仕事ですか?
移住する人にとって「仕事はどうなるんだろう?」というところが不安だと思うのですが、鹿児島に来てからできた仕事と、東京にいる時から続いている仕事のバランスは、今はどんな感じですか?

Wayan:そうですね、今のところはフリーランスの仕事と、自社の仕事と、鹿児島で生まれた仕事がいいバランスで成り立っているイメージです。クリエイティブ関係の仕事や、個人事業主でのデザイン関係の仕事はほとんど東京なのですが、今度ゆきのさんと一緒にさせていただく「Play City Days」とか、まちづくりに関する仕事は鹿児島でいただくことがすごく多いですね。
あと、「これはすごく鹿児島らしいな」と思ったことがありました。私、つい先日、貯金残高が2万円になっちゃったんですよ(笑)。「ヤバイ!」と思った時に「貯金が2万円になっちゃいました〜」という投稿をFacebookに載せたら、「大丈夫?」ってみんなメッセンジャーで連絡をくれて。それで、「この仕事を○○円でやってくれない?」って仕事の依頼をしてくださって、多分みんな無い中から絞り出してくださっていたのだと思いますが、そのおかげでなんとか1ヶ月を乗り切れたんですよね。
鹿児島の人たちは、「この人あなたに合いそうだよ」というようなことをどんどん紹介してくださって、移住者に優しいまちだなと思うことがすごく多いです。本当に困った時は「助けてください」ってヘルプを出すと、助けてくれる方も多いので、「フリーランスで仕事が無いかもしれない」と心配になったとしても、自分から「こういうことやりたいんです」というアクションを起こしていれば、必ず誰かが見てくれているという印象がありますね。

門間:そうなんだ、発信してみるものですね。

Wayan:そう。「貯金が2万円」って言ったらみんな「えぇーー!大丈夫?」みたいな(笑)

門間:それは心配になりますね(笑)

Wayan:一方で、ゆきのさんは就職で鹿児島に来られたじゃないですか?元々住んでいた愛知県とは文化も違っていたと思うのですが、働く上での困難だったり、逆にここが良かった、ということはありましたか?

門間:私は最初が新聞記者という仕事だったので、仕事柄いろんな人とのご縁ができていました。それを経てフリーランスになったので、会社員時代のつながりから今の仕事もつくれているという点で、良いステップアップができたかなと思っています。
新聞記者の仕事はとても楽しかったし、会社のことも好きでした。でも、「取材をする」、「書く」だけでなく「現場を動かすプレイヤー」になりたいと考えるようになってきて、フリーランスに転向しました。さっきWayanさんもおっしゃっていたように、仕事を紹介していただいたり、「一緒にやらない?」と声をかけてくれる人が多かったので、フリーランス転向後も、書く仕事やイベントの企画・設計の仕事などをいただけて、本当にありがたいなと思います。鹿児島は、やってみたいことがあれば自ら発信できて、一歩を踏み出せるまちだと思いますね。

Wayan:本当に巻き込む人も多いし、巻き込まれやすい人も多いですよね。
今やっていることのひとつが「名山新聞」ですよね。

門間:はい、収録スタジオの後ろにも貼らせて頂きました。これは仕事とは別で、自分の楽しみの範囲でやっていることなのですが、「子どもたちと一緒に名山町の人たちを取材して、地域の人に読んでもらう新聞をつくる」ということをやっています。

Wayan:こんなにすごいものを趣味でつくってしまうなんて、名山町って「どんだけ良いまちなんだよ!」って思うぐらい魅力が詰まってる!

門間:名山新聞の取り組みを始める時、公民館や町内会長、通り会長や青年部会長など、まちの色々な人に集まってもらって、私が手書きした紙をもって「こんなことしたいんです!」と話をしたら、「面白そうだから応援します」と言って印刷費を少し補助してもらえました。名山町だけではないと思いますが、やりたいと思ったことを応援してもらいやすい環境だなとは思います。

Wayan:私がクリエイターということもありますが、鹿児島市には『鹿児島市クリエイティブ人材誘致事業補助金』という補助制度もあるので、クリエイターに優しいまちだなってすごく思います。

■未来について

門間:名山町のことが好きになって住み始め、名山新聞もつくらせてもらい、これから名山町でやってみたいことは、空き家を改修して「名山町案内所」をつくることです。色々な人に「名山ってたくさん飲食店があるけどどこに行ったらいいの?」と聞かれることが多いので、そういった人が名山町へ来た時に、まず立ち寄ってもらって、私が「あそこのお店に行ってみてください!」とか、電話をかけて「今なら席空いてるらしいですよ!」とか対応する案内所をしたいなと思っています。

Wayan:わー、良いですねー!

門間:その後は、案内所のところで「名山博物館」をつくりたいです。名山町の高齢の方のご自宅にある古い写真だったり、名山の歴史を物語るものをしっかり保存して、名山の歴史を発信できるような場所をつくりたいと思っています。

Wayan:いいですね!「鹿児島に移住してきたけれど人との関わりがあまりなくてどこへ行けば良いかわからない」という人は、まずゆきのさんのところへ行けばいいっていうことですね?

門間:そうですね!名山町だけではなくて、県内各地の色々な人ともお繋ぎできると思うので、そういう開かれた場所をつくりたいなと思っています。

Wayan:いいですねー。

門間:これから空き家の改修をしていきたいと思っているので、改修工事や大工仕事などに興味がある人はぜひ遊びに来てください。

Wayan:やりたいです!

門間:Wayanさんの今後のことも教えてください。

Wayan:私が今後、鹿児島でやりたいことは3つありまして、1つは、さっき言った「鹿児島を世界一クリエイティブなまちにしたい」ということです。コロナ禍で、みんなが辛い経験を同時期にしましたが、なんとか乗り越えてきたじゃないですか?私が乗り越えられた理由を考えたときに、今一緒にやっている会社のメンバーが、クリエイティブな思考ができたり、逆境を新しいアイディアでポジティブに考えたり、ワクワクするようなものに変換する力が備わっていたからだなと思って。
こんなに自然が豊かで、資源がたくさんあるまちは鹿児島しかないと私は思っているので、鹿児島に昔からある歴史や文化、資源をどうやって今後ワクワクする方向に活かしていくか?ということを考えながら鹿児島でクリエイティブなことをつくっていきたいです。そうすれば、今後どんな逆境が来ても乗り越えていけるまちになると思います。
2つ目は、「鹿児島に文化をつくりたい」という想いがすごくありまして、天文館の端っこあたりに昔の古い映画を上映する「超レトロな映画館」をつくるということです。ネオンがパーンと光る、アメリカにあるような古い映画館で、そこは映画を上映するだけではなく、アートギャラリーにもなるし、音楽が演奏できる場にもなる。そしてド真ん中にBARがあって、どの世代も交流できて、誰かの居場所になる、そんな場所をつくりたいです。
最後が、「銭湯や温泉に関わる仕事」ですね。私はすごく温泉が好きのですが、もっと若い世代の人たちが、温泉や銭湯を身近に感じて、行く機会が増えるようになったら嬉しいなと思います。せっかく鹿児島に来たのなら、鹿児島の特色のひとつでもある「温泉」に関わる仕事もやってみたいと思っています。

門間:わーすごい!とても幅広いですね!

Wayan:幅広いですよね!

門間:銭湯に映画館。

Wayan:鹿児島を世界一クリエイティブなまちにする!

■動画をご覧のみなさまへ。

門間:私はIターンで鹿児島に来ました。同じくIターンであるWayanさんと対談して、2人の共通点だと思ったのが、「すごく人に支えられている」というところです。
私のもう1つの仕事で「移住ドラフト会議」というものがあるのですが、『九州に興味がある人』と『九州で新しい人を迎え入れて何かやりたいと考えている地域』とをマッチングするイベントです。このイベントのおかげで、鹿児島だけでなく九州を中心に、お友達と遊びに行ける地域が毎年増えているのが今すごく楽しいです。興味のある方はぜひ活用してもらえたらなと思います。
そして、名山町でお待ちしていますので遊びに来てください!

Wayan:鹿児島は本当に大きな県で、海と山が共存しているので、その場所ごとに色々な美味しいものや、それぞれの特色があってすごく魅力的な場所です。鹿児島を一周してみたら、住みたくなっちゃうんじゃないかな?と思います。
実は個人的に「鹿児島クエスト」というものをつくっていて、1年間のうちに鹿児島でやりたいことをリストにしています。こういうことをすると、鹿児島のことをよく知れるし、鹿児島のことを知りたいって思えば思うほど鹿児島の方もすごく喜んでくださって、オススメをどんどん教えてくれるので、もし鹿児島に馴染めないかもという不安を抱えている方がいたら、私の鹿児島クエストを共有します。ぜひ一緒にやりましょう(笑)!

門間:何個くらいあるんですか?

Wayan:50個くらいあります!

門間:ええー!例えば?

Wayan:例えば、「鹿児島県で行ったことない温泉20個に行く」とか、「船釣りに行く」とか、あとは「鹿児島の離島全部行く」とかですね。私は車を持っていないので、人に乗せてもらわないとならないのですが、鹿児島の人はみなさん優しいので乗せてくれるんですよ(笑)
困っても大丈夫。助けてくれる人がいるから、移住はすごくオススメですね。

門間:私も車に乗せてもらったことあります(笑)
ということで、皆さん鹿児島でお待ちしております!
ありがとうございました!

Wayan:ありがとうございました!