「住めば都」を体感した鹿児島移住。夫婦で選んだ、新しいライフスタイル - 田中萌・純菜
兵庫県出身の萌さんと、宮城県出身の純菜さん。東京で出会い、「いつか地方に住みたい」という共通の思いを胸に、少しずつ暮らしの選択肢を探してきました。移住フェアをきっかけに選んだのが、鹿児島市でした。
移住から約9か月。Webマーケティングのコンサルタントとしてリモートで働く萌さんと、保育士・絵本作家として新たな挑戦を続ける純菜さんの毎日は、仕事と暮らしのリズムを整えながら、少しずつ土地の空気に馴染んでいきます。
「住めば都」を体感するように広がっていった鹿児島での暮らしについて、お話を伺いました。
鹿児島を選んだ理由
Q. 移住を考えるようになったきっかけを教えてください。
萌さん:東京で出会ったころから、「いつか地方に住みたいね」という話はずっとしていました。僕自身、将来の夢として複数拠点での生活を描いていたこともあって、若いうちに一度やってみたい、という気持ちがありました。
純菜さん:私はもともと宮城に住んでいたので、ずっと東京にいることへの違和感があって。「居場所として何か違うな」という感覚がありました。雪かきはしたくないけれど(笑)、移住するなら自分の趣味を広げられる場所がいいなと考えていました。
Q. なぜ鹿児島に決めたのですか?
萌さん:東京で開催されている移住フェアに参加して、西日本・南日本の自治体をほぼすべて回りました。条件は、仕事で東京に出やすい空港の近さ、一定の都市機能があること、純菜が海を希望していたこと。この三つで絞り込むと、香川・長崎・鹿児島の三択になりました。まず鹿児島に体験移住してみたところ、「もう他の二か所を見なくていい」と直感的に思って、そのまま決めました。
純菜さん:実は私が最初から鹿児島を強く推していたんです。行ったことはなかったのですが、周りに聞くと「鹿児島に行ったことがない」という人が多くて、「みんなが知らない鹿児島に行ってみよう」という好奇心が湧いて。あまり深く考えず、直感です(笑)。
鹿児島の第一印象
Q. 実際に来てみての第一印象はいかがでしたか?
萌さん:「意外と都会だな」というのが正直な感想でした。空港から市内に向かうまでお茶畑や山々が続いていて、本当に都市があるのかと心配になりましたが、市内に入ると、思っていた以上に整っていて。フェリーも行き交っていて、生活するイメージがすぐに持てました。
純菜さん:住んでみてからもポジティブな驚きが多くて。食べ物はおいしいし、自然は近いし、人は温かい。来てよかったという気持ちが積み重なっています。
萌さんの仕事――リモートワークのリアル
Q. 移住後、仕事はどのように変わりましたか?
萌さん:
Webマーケティングのコンサルタントとして、クライアントの戦略立案からホームページ制作・Web広告運用・SEOまで、戦略と実行の橋渡しをするのが主な仕事です。チームのマネジメントも担っています。もともとフル出社でしたが、移住に合わせてリモートワークに切り替えました。
一番のメリットは、やはり移動時間がなくなったことです。東京での通勤はストレスが大きかったので、それがなくなったのは本当に助かっています。クライアントとのやり取りも基本はオンラインで、必要なときだけ東京に出向く形で、うまく回っています。
Q. リモートワークで困ることはありますか?
萌さん:オンとオフの切り替えが難しくなったのはデメリットだと感じています。家が職場になるので、ミーティングが詰まっていると、ご飯を食べながら仕事モードのままになってしまうこともあります。メンバーの些細な表情の変化や、ミーティング前後のちょっとした雑談がなくなったのも、マネジメント上の難しさとして感じています。
純菜さん:寝るまで仕事してますからね(笑)。土日も少し働いていたりして。
萌さん:ミーティングの合間がなかなかなくて、トイレに行くのも走っています(笑)。ただ、それでも「ありがたいことに忙しい」という状況なので、仕事自体は成り立っていると思っています。
Q. 夫婦でのオン・オフの作り方は意識していますか?
萌さん:晩ごはんは一緒に食べるように意識しています。どんなに忙しくても、お昼も含めて食事の時間は合わせるようにしています。それがちょうどいいリセットになっているかもしれません。
純菜さん:私が行きたいところや、調べたイベントに「行くよ」と引っ張っていく係をやっています(笑)。土日は私が計画を立てて、月に1〜2回は霧島や離島など少し遠出するようにしています。家という職場から連れ出す役割ですね。
純菜さんの活動――保育・絵本・カタツムリ
Q. 純菜さんは鹿児島でどのような活動をされていますか?
純菜さん:東京では保育園で8時間働いた後にベビーシッターもしていて、土日も空いていればすべて埋めるくらい働いていました。描きたいという気持ちはずっとあったのに、時間が全然作れなかった。鹿児島に来てから時間ができて、今は絵本づくりに取り組んでいます。
絵本の根っこにあるのは「子どもに何かを伝えたい」という気持ちで、絵本という手段を選んでいます。臨床美術士の資格も取得していて、表現を楽しむことへの関心も深まっています。ベビーシッターも引き続き行っていて、子どもと関わる仕事をもっと広げたいという気持ちが、今の中心にあります。
Q. 絵本づくりはどんな作品を目指していますか?
純菜さん:実はカタツムリが大好きで(笑)。子どもが連れてきたのがきっかけで、調べたらすっかりはまってしまって、今は自宅で30匹ほど飼っています。卵から赤ちゃんが生まれると一気に100匹近く増えて、小瓶に1匹ずつ入れて保育園で配ったこともありますし、カタツムリの生態も盛り込んだ絵本も作り、読み聞かせをしたこともあります。
これからもカタツムリ愛を伝える絵本は作りたいですね(笑)。また、移住して気づいた鹿児島の魅力も絵本にして、他の地域の子どもたちが読んで「鹿児島に行ってみたい」と思えるような作品を作りたいと思っています。
鹿児島での人とのつながり
Q. 移住後、地域の方との交流はどのように広がりましたか?
萌さん:鹿児島に来てからポーカーを始めて、その仲間ができたのが大きかったです。鹿児島県よろず支援拠点のコーディネーターもやらせてもらっているので、そこから事業者さんとのつながりも生まれつつあります。僕は比較的、つながりが広がってきている感覚があります。
純菜さん:私はまだ鹿児島での自分のコミュニティが少なくて、今年はスキューバダイビングを始めて、そこからつながりを作っていこうと思っています。焼酎にはまっていて、家の棚に焼酎が増えてきました(笑)。鹿児島に来たなら深めたいと思って、焼酎マイスターの資格にも興味を持っています。
これからの展望
Q. 萌さんは鹿児島でどのようなことを実現したいですか?
萌さん:ライフワークとして「地域を元気にしたい」という気持ちがずっとあって、それが今回の移住の根っこにあります。まずは一人ひとりの事業者さんのお役に立てるように、自分のWebマーケティングの経験を生かして、売り上げや利益が少しでも伸びる手伝いができればと思っています。
将来的には、プレイヤーとプレイヤーをつなぐコーディネーターとしての役割を担っていきたいです。具体的にこうする、という設計は決めていなくて、やりながら見つかっていくと思っています。今いる状況を楽しめることが一番大切だと感じています。
Q. 純菜さんの今後の目標を教えてください。
純菜さん:本を出したいというのが一番の目標です。鹿児島の魅力が伝わる絵本も書きたいし、カタツムリの本もあるし、まだ方向性が定まっていないところも正直あります。今はやりたいことを一気にやってみて、「これだ」と引っかかるものを探している最中です。
結局、根っこは全部「子どもに還元したい」というところに行き着く気がしています。鹿児島に来てから、時間の使い方を自分でコントロールできるようになって、それがすごく嬉しい。こんなに自由に動いていいのかなという後ろめたさもありつつ(笑)、でも夫婦でこの選択ができたことにはとても感謝しています。
移住を考えている方へ
Q. 地方への移住を検討している方にメッセージをお願いします。
純菜さん:まずは体験で行ってみることが大事だと思います。ネットやSNSでいくら調べても、実際に行ってみると全然違います。「失敗してもいい」くらいの気持ちで、フランクに「ちょっと行ってみよう」という感覚で来てみてほしいです。永遠にここに住まなければいけないわけではなくて、気に入ったら長くいればいいし、長い旅行みたいなイメージで来てみるのもいいと思います。うちの親にも「どうせすぐ飽きるよ」と言われましたが(笑)、「行ってみてごらん」という感じで送り出してもらいました。
萌さん:合理的に考えれば、変化しないことが正解に見えることが多い。でも、あえて「不正解」を選んでみることが、人生を豊かにするきっかけになると実感しています。東京にいたままでは得られなかった経験が、この9か月でたくさんありました。悪いことも含めて、全部刺激です。捉え方次第で「住めば都」というのは本当だと思います。まずは一度、下見でもいいので来てみてほしいです。
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